情報化時代になり、私たちの時間感覚はますます加速しています。
自称ショートスリーパーの人が増えているようですが、脳の働きから考察すると、睡眠は時間の長短よりも「質」のようです。
この記事では『質の良い眠り』についてお伝えします。
《もくじ》
1. 睡眠の質は2つのバランス
2. 浅い睡眠のときに脳がしていること
3. 深い睡眠のときに体がしていること
4. 眠りの不思議な話
5. 質の良い眠りのためにできること
2種類の睡眠があるのをご存知でしょうか?
レム睡眠(Rapid Eye Movement)とノンレム睡眠(Non Rapid Eye Movement)です。
もし安定的な睡眠を確保できていれば、入眠直後はいったん深いノンレム睡眠に入り、
その後は2つの睡眠を約90分ごとに繰り返します。
浅い眠りは【レム睡眠】の状態です。
Rapid Eye Movementと表現されるように急速な眼球運動が見られ、このとき脳内では情報処理を行っています。
眠っている人のまぶたを持ちあげると、眼球が右左に素早く動いています。まぶたの上からでも、その動きがわかるときがあります。
日常で入って来た情報や経験したことは、通常、短期記憶の海馬に格納されています。
そしてレム睡眠時に脳内で情報処理を行い、大脳新皮質(長期記憶領域)に振り分けていきます。
どのように分類されているかは不明ですが、このとき私たちは夢を見ています。
さまざまな記憶を同時に処理するため、夢はつじつまの合わないストーリーになっていたりします。
中には夢を見ないという人がいますが、それは意識的には覚えていないだけで、私たちの脳は必ず情報処理をしています。
したがって睡眠不足が続くと、記憶力の低下や勘違いを起こしやすくなります。
また、レム睡眠中は脈拍や呼吸、心拍等が不規則に変化し、自律神経が活発に動いています。
対して体は動かないことが多く、この眠りの状態を「体の睡眠」と言います。
深い眠りは【ノンレム睡眠】です。Rapid Eye Movementが無い状態なので、眼球動作がありません。
このとき眼球は目の裏側に回っている、または上転していると言われ、まぶたを持ちあげると白目になっています。
このとき脳内の情報処理は停止状態となり、今度は逆に体が目覚めます。
脈拍や呼吸、心拍は安定し、自律神経の活動は低下しています。
このときの人を起こすと非常に目覚めが悪くなります。
また、成長ホルモン分泌や蛋白同化が行われ、免疫増強作用があります。
このようなノンレム睡眠は大脳の睡眠ともよばれます。
また、驚くことに、体は頻繁に寝返りをしながら、日常で生じたゆがみ等を整えるために「自己整体」を行っています。
子供が激しい寝返りをしているときは、このノンレム睡眠であり、深い眠りの状態です。
レム睡眠を「体の睡眠」と表現するなら、ノンレム睡眠は「大脳の睡眠」であり「体の覚醒」です。
ノンレム睡眠は唯一思考が働いていない時間で、この状態をあえて「覚醒」と表現することがあります。
作家の村上春樹さんのインタビュー集に「夢を見るために、僕は毎朝目覚めるのです」という言葉がありました。
それは「人が生きること=夢を見ること」という側面を、正面から語る言葉だと思います。
ノンレム睡眠は熟睡状態のため完全に無防備ですが、無防備であるということは、一切の概念にとらわれない
本質の自分に還っている状態です。
つまり私たちはノンレム睡眠を確保することによって、毎晩覚醒していると言えるのではないでしょうか。
そしてそれは生きていく上で重要かもしれません。
そうでなければ、なぜ私たちは人生の1/3を睡眠に費やすのでしょう?
眠りは、まだまだ解明していないことが多く、どうやら、ただの休養だけではないようです。
もしパフォーマンスの低下を感じている場合は、睡眠の質を見直してみてはいかがでしょうか。
私たちは眠ってしまうと「体の睡眠」「大脳の睡眠」と言われる状態となり、どうすることもできません。
私たちに出来ることは、寝る前の状態を整えることだけでしょう。
質の良い眠りに導くために出来る5つのポイントです。
① 照明の調整
② 体圧分散のマットレス
③ 寝返りを妨げないスペース
④ 仰向けで体を開く(手のひらを上にする)
⑤ 室内の温度調整
照明をつけたまま寝落ちしてしまうと脳は十分に休まることができません。
また、布団にくるまって眠る、うつ伏せで眠るなどは体の動きを制限するため、自己整体を妨げます。
とくに体が沈みこまない体圧分散のマットレスで眠ることは重要です。
体を解放し、心を解放して眠りにつくように心がけましょう。
執筆:瀬野 容子(せの ようこ)
一般社団法人日本ナースオーブ 代表