睡眠不足問題と勤務間インターバル制度
ここでは、長時間労働と連動して発生する従業員の睡眠不足問題と
「勤務間インターバル制度」の活用について紹介します。
<睡眠ブームの到来>
2016年頃から「睡眠」が世の中のブームとなっています。
ビジネスマン向けの睡眠関連書が次々と出版されたり、深夜業務が多い企業などを対象とした
「従業員の睡眠改善」に関するセミナーが話題になるなどしています。
「平成27年(2015年)国民健康・栄養調査」(厚生労働省)によると、1日の平均睡眠時間が
「6時間未満」という人は2015年で39.5%です。この割合は、2007年以降増加し続けています。
睡眠ブームも、このように睡眠不足に悩む人が増えていることの裏返しと言えます。
まず、企業にとっての「従業員の睡眠不足」について考えてみましょう。
<睡眠負債の恐怖>
「睡眠負債」という言葉をご存知でしょうか。スタンフォード大学により提唱された概念で
日々のわずかな睡眠不足が負債(借金)のように積み重なっている状態を指します。
短期的な睡眠不足であればしっかりと休養すれば改善しますが、睡眠負債の場合には
本来の必要睡眠時間数を確保していないにもかかわらず、本人は「支障のない程度には寝ている」
と感じていて、睡眠不足の自覚がないまま心身にダメージが蓄積し、脳のパフォーマンスの低下や
がん、生活習慣病、うつ、認知症などの発症も引き起こすとされています。
なお、適正睡眠時間は個人によって異なると言われています。
一例として、東北大学の調査によると、睡眠時間が6時間以下で睡眠負債が溜まった状態の
人においては、男性の前立腺がんの発症率が1.38倍、女性の乳がん発症率が1.67倍に悪化
したとのことです。
<睡眠負債で高まる労災リスク>
睡眠負債は、慢性的な長時間労働と表裏一体の関係にあります。
企業にとっては、従業員の疾病発症率が高まるということは、自社の労災発生リスクが
高まることを意味しています。
万が一、自社の従業員が脳・心臓疾患や精神疾患を発症し、これが長時間労働によるものと
主張されることになれば、企業はこの疾患の「業務起因性」や、そもそもの「安全配慮義務」を
問われる事態ともなりかねません。
<労働者と企業を守る「勤務間インターバル制度」>
今、労働者の睡眠負債への特効薬として期待されているのが「勤務間インターバル制度」です。
「勤務間インターバル制度」とは、退社から出社まで一定時間を空け、労働者の休息時間を確保する制度です。
就業が遅くなった際、始業を後ろ倒しすることで、睡眠を含む休息時間の確保につながります。
厚生労働省の有識者会議における資料によれば、この「勤務間インタバール制度」をすでに導入している
企業および導入検討中の企業は、わずか10%程度であり、普及はまだまだこれからの状況ですが
企業にとって要注目の制度と言えます。