若年性認知症
若年性認知症への対応を会社として準備されていますか?
<若年性認知症に関する調査>
65歳未満で発症した認知症を「若年性認知症」と呼びます。
有名なアルツハイマー型だけでなく、脳血管の障がいや頭部外傷によっても発症したりと、その原因は多様です。
働き盛りの現役世代が認知症を発症すると、仕事に影響を及ぼし会社を辞めることになった場合には
経済的困難に直面し、生活設計が崩れるなどの大きな影響があります。
若年性認知症について、企業と団体を対象に実施したアンケート調査(認知症介護研究・研修センター:2017年)
の結果から、次のようなことが明らかになりました。
<発見の経緯は職場での受診勧奨が最多>
会社が若年性認知症の人を把握した経緯として「会社からの受診勧奨」が約5割と最も多くなっています。
その他は、「本人からの相談・申告」が約4割、「家族からの相談・申告」が約1割となっています。
企業等に勤めている人では、家庭よりも職場での気づきが重要なようです。
<主な初期症状>
1. 生活に支障をきたすような記憶障害がおこる
特に初期段階での最も一般的な症状が、直前に得た情報を忘れてしまうというものです。
重要な予定を忘れてしまったり、何度も同じことを聞いたりすることが特徴です。
2. 計画を立てたり、問題解決をすることが困難になる
計画を立てたり、順序に沿って行動をすることが以前のようにできなくなります。
数字を扱うことに関しても、苦手になります。
3.家庭や職場などでいつも行っていたことを、最後までやり遂げられなくなる
いつも運転している道がわからなくなったり、仕事の予算管理ができなくなったりなど
日常生活でこれまで問題なく行っていたことが、できなくなります。
4.時間や場所がわからなくなる
日時や季節などがわからなくなり、時間の経過を追うことが難しくなったり
自分がどこにいるのか、どうやって目的地に行けば良いのかが分からなくなります。
5.視覚で捉えたものや、空間的感覚がわからなくなる
文字が読めなくなったり、距離感覚や色彩感覚が鈍くなります。
鏡に映った自分を、誰かほかの人が室内にいると勘違いをしたりします。
6.言語や読み書きに支障が出る
会話についていくことが難しくなります。
話している途中で止まってしまってどう続けて良いか分からなくなったり
何度も同じことを繰り返したりします。
7.モノの収納場所を間違えたり失くしてしまい、見つけられない
いつもと違う場所にモノを置いて失くしてしまい、見つけられなくなる。
それを、誰かが盗んだと勘違いするようになります。
8.適切な判断ができなくなる
判断や決断ができなくなり、通販で多額の出費をしてしまったりします。
身なりに気を配ることができなくなり、清潔感がなくなっていきます。
9.仕事や社会活動から距離を置くようになる
それまでの趣味やスポーツ、仕事でのプロジェクトなどから離れて
人との関わり合いから距離を置くようになります。
応援していたチームを忘れたり、趣味も最後まで成し遂げられなくなるなどの
これまでできていたことができなくなるような経験がそうさせてしまいます。
10.気分や人格が変わる
混乱する、疑い深くなる、落ち込む、おびえる、心配性になるなどの変化があります。
家庭や職場、友達と一緒にいる時以外にも、例えば自分が居心地が悪い場所などでは
怒りっぽくなります。
参考≫alzheimer’s association [KNOW the 10 SIGNS]
<会社としての対応状況>
会社の対応としては、約6割で「ほかの業務・作業に変更した」としており、配置転換による就労継続を図っています。
次いで、「労働時間の短縮・時間外労働削減」、「管理職業務からの変更」が行われています。
報酬・雇用については、「作業能力低下でも報酬を維持した」が6割以上と最も多くなっており
本人の会社に対するそれまでの貢献を考慮している会社が多くなっています。
一方で、症状の進行状況によっては合意退職も行われているようです。
<対応の検討が必要>
最近では、障がい者雇用について認知度が高まってきていますが、それは身体障がいに偏っているようです。
若年性認知症の人の多くは精神障碍者保健福祉手帳を取得していることから、身体以外の障がいについても
一層の理解が必要となってくるでしょう。
若年性認知症は早期発見・早期治療が重要とされています。
貴重な人材に力を発揮し続けてもらうためにも、受診勧奨、休職・復職、職務変更に関する規定の整備や
相談先に関する情報提供など、該当する従業員が現れた場合に会社が適切な対応を取れるよう
検討をしておく必要があるでしょう。