保健師のお役立ち情報

産業看護職のリアル~企画立案・稟議②~

note

今回は、前回『産業看護職のリアル~企画立案・稟議①~』でご紹介したアンケートの続きとして
企画立案・稟議を実際にどのような会議で提案したのか、また、企画を通すための苦労やコツについて
お答えいただいた内容をご紹介させていただきます。

まだ前回の記事をご覧いただいていない方はこちらからご覧ください。


《提案における報告相手や会議はどのような会議体か?》


勤務される企業によって様々な名称が存在しておりますが、まずはどのような立場の方へ
企画や稟議の提案を行ったのかについての回答を見てみましょう。

グラフの通り、課長クラスへの提案が最も多く、中には取締役への提案をしているケースもあるようです。

先ほどの結果では大企業勤務者が多いことが分かりましたが、上場企業の事業部長以上への稟議・提案は
相当な苦労があると思われ、そこで産業看護職の皆様が既にご活躍されていることが見て取れました。

それでは次に、企画(稟議)内容の説明のために、会議での発表(報告)を行ったのかどうかについて見てみると
約半数の方が、会議での発表や報告を行っています。




発表(報告)を行った会議の名称については以下の通りです。





会議の名称は様々ですが、看護職の皆様が参加される機会の多い「安全衛生委員会」が多いことが分かりました。
次いで、企画会議、健康経営や健康推進会議、予算会議等、予算承認を伴う会議があることも分かります。




そのような会議の参加人数は10名のケースが最も多い結果となりました。
20名以上というケースも多くあるようです。




更に、会議に参加した一番上席の方の役職についてはグラフの通りです。
執行役員や取締役を相手に提案を行っている方もいらっしゃいますが、このクラスへの提案は相当難易度が高いと思われます。





更に、最終的に何度報告を行ったかについては、1回で終わるケースは少なく、2回~5回のケースが多いことが分かります。
回数を重ねるごとに報告相手も変わっていくと思われますので、1つの企画を通すのに多くの労力と時間がかかることが見て取れます。


《企画を通すための苦労》

実際に経験された方へ、企画を通すために苦労した点を伺ったところ
『説得力のあるデータの提示、論旨明快なスライド作成』に苦労したと仰っていました。

アンケートで見てきた通り、企画を通すためには様々な役職の方への報告が必要となり
産業医療職でない方へ説明する機会が多くあります。
その時、専門的な知識がない人でも分かりやすく、説得力のあるデータがあることは
企画を通すのに必要であるということは1つのポイントとなります。

《ここがポイント!企画を通すためのコツ》


今回、アンケートのお答えいただいた企画立案・稟議の経験がある皆様に
企画を通すためにコツについてお伺いしましたのでご紹介いたします!
ぜひこれからの業務にお役立てください。


関係各所との連携
 ・予め役員クラス・キーマン等に話を通しておくこと。
 ・日々の問題点や職場環境について、ことあるごとに報告すること。
 ・安全衛生委員会や産業医と密に情報交換をすること。
 ・考え方に賛同してくれる管理職を探しておく。
 ・下準備をしっかり行うことが大事で、そのために関連部署と事前に調整を行う。
 ・企画書の書き方が上手な上司を巻き込む。
 ・丁寧に着実に進めていきました。


報告の内容
 ・具体的な数値(予算、ランニングコスト、現状データ、予測データ)の提示。
 ・法令で決まっている旨を伝える。
 ・費用対効果を明確にする、会議トップの意向に合わせた内容を盛り込む。
 ・トップダウン方針に被せる。
 ・エビデンスをとって説明する。
 ・企画書の作成、実施スタッフの人選、確保。
 ・分かりやすい説明と資料作成 プレゼン能力。
 ・報告のタイミングや周囲の情勢の変化も重要なポイントになります。



《最後に》

今回は、「産業看護職のリアル~企画立案・稟議~」ということで
経験者の皆様にご回答いただき、貴重なデータを得ることができました。

特に、少人数職場の方々は他の看護職の方々の取り組みについて中々情報を得ることができないと思いますので、
今回の内容が少しでも参考になっておりましたら幸いでございます。

今回の内容は、保健指導や面談対応などとは少し違う部分ではありますが、企業で働く上では必要なスキルでもあります。
根拠となるデータを提示する、関係各所と密に連携をとる、といったことは
ぜひ普段の業務に取り組む上でも意識していただくと良いのではないかと思います。

※今回のアンケート結果は『産業保健と看護第16巻4号』関西医科大学三木先生の企画である
 「産業保健現場のコンフリクトマネジメント」にて弊社代表が執筆した記事内で取り上げさせていただきました。