2019年9月、厚生労働省による「令和元年版労働経済の分析(労働経済白書)」が報告されました。
そこでは中小企業における人手不足を緩和するための「働きやすさ」を向上するための取り組みの1つとして「仕事と病気の両立支援」を重視することが挙げられています。
厚生労働省によって毎年発表される、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について統計データを活用して経済学的に分析し、広く国民に伝えるための報告書です。(以下「白書」とします。)
今回の報告書は2019年3月までの調査分析をもとに作成されており、人手不足下における「働き方」について、「働きやすさ」と「働きがい」の観点から分析が行われています。
白書によると、大企業を含んだ全体としての雇用情勢としては、白書調査時(2018年度)の「完全失業率」は2.4%であり、1992年度以来26年ぶりの低水準となりました。一方、「有効求人倍率」は1.62倍と1973年度以来45年ぶりの高水準となっており、雇用情勢は着実に改善してきています。
しかし、日本銀行が「全国企業短期経済観測調査(日銀短観と呼びます。)」より算出した「雇用人員判断DI(指数)」によれば人手不足であると回答する企業の割合は1990年代初頭のバブル期に次ぐ多さとなっており、企業規模別に見ると、中小企業が最も人手不足感が高くなっています。
正社員で、従業員が100名超の大企業と、100名以下の中小企業においては、100名以下の企業に勤めている場合の方が「働きやすい」と答える割合が高くなっています。((独)労働政策研究・研修機構実施の「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査2019による)
その背景として、100人以下の企業で勤務している場合の方が1人当たりの業務裁量性が高く、子どもや家族の急病等による急な有給休暇が取得しやすい傾向があるためと分析されています。さらに中小企業においては女性と高齢者の割合が高く、その背景が「職場の働きやすさ」にプラスに影響していると考えられています。
(令和元年度労働経済の分析(労働経済白書)P.162 第2-(2)32図)
これらの現状を踏まえて、上記の表「従業員規模別にみた働きやすさの向上のために重要な雇用管理」をみてみます。
従業員規模に限らず、全体的に重要であると思われている取り組みをみると、
・職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化(上記グラフ項目⑬) ・労働時間の短縮や働き方の柔軟化(上記グラフ項目⑨) ・有給休暇の取得促進(上記グラフ項目⑫) |
が挙げられます。
これらの取り組みの中に、100名超の大企業に勤めている正社員よりも、100人以下の中小企業の正社員が逆転して、より高く重視している項目がいくつかあります。
特に目立つのが
・ 人事評価に関する公正性・納得性の向上(上記グラフ項目①) ・ 仕事と病気治療との両立支援(上記グラフ項目⑯) |
の2点です。
健康経営の面から着目すると、中小企業において「仕事と病気治療の両立支援」を行うことが「働きやすさ向上」に向けたヒントとなりそうです。
(参考資料)
・厚生労働省 令和元年版 労働経済の分析 -人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について-
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/19-1.html
・厚生労働省 事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115267.html
仕事と病気治療との両立支援については
『仕事と病気治療の両立支援の輪を』をご覧ください。